産業保健関連事例のデータベース化システムの開発研究
調査研究課題名
産業保健関連事例のデータベース化システムの開発研究
研究代表者
馬場 快彦(福岡産業保健推進センター所長)
共同研究者
東  敏昭(産業医科大学教授)
舟谷 文男(産業医科大学教授)
八幡 勝也(産業医科大学講師)
津田  徹(産業医科大学講師)
筒井 保博(日立金属(株)九州工場産業医)
1.はじめに

 産業保健活動の実務担当者の教育や、事業者・労働者に対する教育には、実際の事例を用いた教育が有用である。また、問題となる症例の検討とこの結果を踏まえての教材の作成は、技能の向上に役立つ。実際の改善事例は、似通った背景をもつ事業場間での改善促進に用いることが出来、特に地域・業種毎に身近な事例が適する。
 こうした事例データの集積・データベース化は産業保健推進センターの持つべき機能と考えられる。地域特性を考慮した、産業保健サービスに必要な知識情報データベースの作成を、各産業保健推進センターで行うには、操作が容易な情報の入力・編集・出力が可能なシステムを開発導入する必要がある。また、今後の地域産業保健センターの整備の進展に併せて、機関間で情報が送信可能な電子化されたデータベースを持つことが望まれる。また、事例情報には、写真・グラフ等の画像情報が含まれ、文字・数値情報と合わせて一元化して電子化されるデータベースが望まれる。
 本研究は以上のような必要要件を具備した、知識情報データべ−スの作成を行うシステムの開発を目的としたものである。
2.システム開発の基本コンセプト・対象事例情報

 産業保健推進センターで行う情報サービスのためのシステムのコンセプトおよび具備すべき機能を以下のように整理した。
1)カラー写真、胸部X線写真などの医療画像、イラスト・図、検査結果などの数値・文字情報を一元化してデジタル化できること。
2)操作が容易で、コンピュータを使う感覚ではなく、コピーやファックスなど多くの人にとって身近な機器と同程度の感覚で使いこなせること。
3)必要となる機器が、普及した比較的安価な機器により構成しうること。(機器の連結が、ややもすると複雑なイメージを与え、またスペースをとることから、将来的にはシンプルな構成を可能なものとしたい)
4)オンラインによる産業保健推進センター・地域産業保健センターなどの機関間の連結も可能な機器の選択。
5)紙・フィルム上のみならず、フロッピーや光磁気(magneto-optical disc:MOD)ディスクなどへの出力により教育資料化できること。
 このコンセプトの基に、個々の産業保健推進センター地域で発生した事例を、簡単な操作で適宜入力してデータベース化するソフトの開発を目的とした。
3.開発したシステムの構成・機能

 本システム(ソフト)の基本機能は、産業保健関連事例情報を構成する、カラー写真、胸部X線写真などの医療画像、イラスト・図、検査結果などの数値・文字情報を一元化してデジタル化し、入力・編集・出力することである。操作は現状では機器構成が感覚的圧迫感を与える可能性はあるが、コンピュータを使う感覚ではなく、コピーやファックスなど多くの人にとって身近な機器と同程度の感覚で使用できる形とした。
 開発したシステムを利用するための機器構成は、システムの中核となる通信機能をもつパソコン(MacあるいはPS/V)、画像を取込むスキャナー(入力)、光磁気ディスクドライブ(入出力)、CD-Rドライブ(入力、将来出力)、プリンター(出力)、バーコードリーダー(入出力用ツール)からなる(図)。
 システムは、じん肺写真情報などの健康管理関連情報をも高精度で入力できるIS&C(Image Save & Carry)仕様にも対応したものとした。
4.今後の課題

 本試作システムで用いたパーソナルコンピューターは、通信機能を内蔵した機種である。将来的にオンラインによる産業保健推進センター・地域産業保健センターなどの機関間の連結を可能とし、また機関間で操作性の違いを生じない構成が必要である。電子化されたデータベースは、産業保健推進センター間、各地域産業保健センターと推進センターの間、あるいは会員制の元、事業所の産業保健サービスを行う医療機関間でも情報交換が可能とすることが課題と考える。
 このネットワークの充実のためには、将来的にはサーバー機能を持ったコンピューターを各推進センターあるいは、地方中核となるセンターにサーバー機能を持たせることが好ましいと考える。